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【第3回】教習所Re Visit! 〜今、自動車教習所に期待すること〜

[対談]

中山智晴氏

平成21年9月25日

聞き手:2009年度  青年会議所教習所部会部会長 矢澤文建

 

【プロフィール】

中山智晴(なかやまともはる)

全国指定自動車教習所協会連合会 第9次長期ビジョン研究会幹事長、第7次長期ビジョンにも第2班班長幹事で参加、神奈川県都南自動車教習所代表取締役

今回の対談は、全指連第9次長期ビジョン研究会の中山智晴幹事長を迎え、四谷の全指連事務所の会議室をお借りして行った。第7次長ビジョン研究会にも参画し、第2班の班長を務めた実績がある。政権が交代し、大きく行政の方向性が変わっていく中で、首相の「1990年時点に比べ二酸化炭素の排出量を25%削減することを目標」とする声明は、今後の業界にも大きく影響を与えることが予想される。変化する先を意識して舵取りをするという大役を担った中山幹事長の抱負を伺った。

(お断り:この対談が行われた9月25日現在の時点で、これから第9次長期ビジョン研究会の活動の骨子を具体的にしていく段階でした。対談で語られた内容やアイデアは、方針として決定された事項ではありませんのでご了承ください。)

 

■長期ビジョン幹事長を受けて

 

— 道交法の施行から本年で50周年でしたっけ?

 

中山:ちょうど昭和35年から(1960)年から数えて、来年が50周年になりますね。昭和35年の12月20日最初の教習所が指定されています。

 

— 来年で満50周年。

 

中山:来年でそうなりますね。半世紀経つわけですよね。

 

— 半世紀が経った時代の、長期ビジョン研究会の幹事長として意気込みはありますか?

 

中山:後付でね。(役職の拝命は)たまたまですよ(笑)。ただ時代の流れというのは確実にあったわけで、免許を取りたいという、国策でもあったわけだし、国民の要求に警察の対応では間に合わなくなって、新しい制度(免許制度や自動車教習所)ができてきたわけですよね。だが現在にいたっては、その需給バランスが崩れてしまっている。供給量(自動車学校)の方が、大きく上回っている。市場原理から言えば、価格は当然下がる。だからいま、日本各地で価格競争が起こってしまうわけで、その競争の中で淘汰されてしまう教習所も出てしまうでしょう。それでも仕方ないことだとは思うんですけれども、市場原理だけで物事が進んでしまったとき、教習所のもうひとつの意味や側面、免許行政の一翼を担っている点がないがしろにされてしまって良いのかということは、考えます。高齢者講習ですとか、初心者講習ですとかですね。機能していかない。そこには問題意識を持っています。

 

— 国民皆免許という、モータリゼーションを背景にした国家政策があったわけですよね。その中で国民も免許を必要としてきたわけだし、各産業は物流の促進によって飛躍的に発達し、同時進行で社会資本の整備も進ませ、日本経済の高度成長を実現してきた時代があった。奇跡と呼ばれた日本の経済発展の背景にうまくかみ合っていた。

 

中山:さて、そうした時代を経て、社会そのものが成熟した時代、段階になったと。我々の業界も転換するときが来たのかなと。我々の役目が、いろんな角度から考えたときに、変わり始めたのかなと思うのです。いま、そういう半世紀の節目に立っている。ただ「免許を取らせる」という目的だけで、「教習所」という業界は次の50年をやっていけるのか?という問いは当然ありますよね。免許を取得してもらうという目的で設立した機関ではありますけれども、それだけではもう立ち行かない。7次の研究では、「(教習所の)意味的転換を図っていかないといけない」という結論にたどり着きました。どれだけ交通社会に寄与できるか。安全な交通社会の実現にどれだけ貢献できるか?という部分がないと、いけない。今のままでは、教習所の量は多すぎる。

 

— 中山さんが「教習所のもうひとつの意味」とおっしゃった言葉の意味に、どれだけの経営者が響いて感じてくれるかということが鍵になってきますね。

 

中山:正直な話、僕たち自身(長期ビジョン研究員)も、これからの50年、どうするのって言うコンセンサスを得てない。もう少し話し合わなければいけないと思うのです。教育的な立場にたたねばいけないことは、ほとんどの皆さん感じておられると思います。この第9次の長期ビジョン研究会では、そうしたBigMapを作り上げていく必要があるのではないかと感じています。教育を謳うのはいい。ではその「教育」とは何か?何ですよね。「事故を起こさないドライバーの育成」ということは大昔から取り組まれている。では具体的にどういうトレーニングがそれにあたるのかを、もうそろそろ明らかにしなければいけない。いろんな研究を見ても、心の教育が大切だという。では、「心」とは何か?「心の教育」とは何か?に、答え切れていないんですよね。心の教育が謳われてはいるものの、それは「倫理観や道徳観の矯正」ではないと思うのです。ドライバー1個人の中に「それそのものの醸成」こそ、今取り組まなくてはいけないのではないか。そういう醸成の仕方というのは、学校教育ではなくて、教習所でこそできるものでないか?という仮説を立てて、過去研究をしてきました。

 

■経営という現実のはざまで

 

中山:ところがですね、今我々の経営環境というのは、きわめて困難な状況にあります。将来の姿を明らかにしていくことは確かに大事なのですが、それだけでは皆さんやっていけない。大きなBigMapにしたがっていけば、今現在の経営も報われるという保証みたいなものがないと、だめなんですよね。ただBigMapを作るだけでは、人は動いてくれない。

 

— 二宮尊徳の言語録に、「遠くを測るものは富み、近くを測るものは貧ず。それ遠くを測るもの100年のために杉苗を植う。」という一節があります。しかし、現実の困難を前にしたときには、先を見る余裕はないのが普通なんですよね。そういう一人一人の経営者を責めることはできない。

 

中山:先の長期ビジョンの会議でさえ、「将来のビジョンもいいけれど、目の前の利益をどう確保していけばいいのか」という議論が出てしまったんですよね。経営環境がどんどん悪化している中で、経営のモチベーションが下がっているという。しかし、こう話しました。教習のときはどうかと。場内教習をやっているときと、路上教習をやってるときの目線は一緒か。場内は先の10mを見渡さればいいでしょう。しかし路上に出たとき、もっと遠くまで見渡さなければ、交通全体を見渡さなければ、安全運転などできないと。経営も一緒でしょ?と。将来のビジョンを見渡し、そのための確実な一歩を踏み出していくことが重要で、両方大事なことですよと話しました。

 

— 現実的な対応というのは大切ですね。今現在の問題を解決するために、今すぐ対応しなきゃいけにこともあるし、将来に向けて、今すぐ仕込まなきゃいけないことがある。どっちも「今」やらなきゃいけないことなんですよね。すぐ成果を出すこと、数年後に成果を出すこと、同時進行ですね。

 

中山:そうですね。交通安全社会を実現することとは、そう簡単にはできない。10年経って、どういう段階にたどり着いているかというものです。飲酒運転なんかは、ずいぶん意識が変わりましたよね。来年2010年は、ゆとり教育を受けた世代の若者たちが社会に出てくるんですよ。そのとき何かが変わってくる可能性はある。若い人たちの行動様式というか、車に対する意識や感覚が違ってきている。

 

— そういう世代への問題提起をしておく必要はあると思いますね。その世代の人たちの思考や行動様式が、ひどく自己中心的なものになっているのではないかという、予測はされますよね。自分に都合のよい思考をするのではないか。

 

 

■9次の研究テーマのアイデア

 

中山:皆さんそういうことをおっしゃいますね。教習所として教育的な立場をとっていくとするならば、その辺りをきちんと情報として吸い上げて、取り込んでいかないといけないんじゃないかなと思いますよ。だから、9次の研究テーマのひとつとして今の若者の感性や価値観というものがどうなっているか調べたいというものがあります。

 

— なるほど。すばらしいですね。

 

中山:感性に結びつけた教習をしていかないと、人の行動は変わらない。そういう教習所だけができる「教育」が、交通安全社会を実現していく突破口になると思うんです。今まで通り、知識と技術だけを教えていればいいって言うのは、過去50年やってきたことです。ところが今度は、そういう対象となる人たちに対して、どういう意識付け・動機付けをするかということまで踏み込まなくてはいけないと思うんです。人間って、もともと誰でも自己中心な生き物じゃないですか。でも自己中心にも2種類あって、自立的な自己中心と、依存的な自己中心がある。今の若い人たちって、依存的な自己中心さがあるのではないか?と思うのです。あなたがすれば私もこうする、私ができないのはあなたの所為だ、ほかの所為だっていう、未熟な感覚。自分をわきまえて、自分を知っている自己中心、自立した個人というのがあって初めて、相互依存ができるわけですよ。交通社会ってまさしく相互依存じゃないですか。自立した個人があってこそ、社会が成立するわけで、またそういう社会を見据えないといけないですよね。

 

— ゆとり教育をうけた世代が社会に出てくるという現象があると。そうした若者の感性や価値観を調べたいという9次のテーマ設定があると。未熟な自己を是とする若者が社会に参画してくることを、ひとつの問題として捉えることは非常に面白いと思います。そこで、話は脱線するかもしれませんが、そうした若者に対する人格形成の場として自動車学校に何ができるか?というのは非常に興味があるのですが、どのような可能性を見られてますでしょうか。

 

中山:これは私見でありますので、9次のテーマとはまた別モノと考えてほしいのですが、公共の学校での教育というのは「競争教育」なんですよね。誰かに勝たないといけない。同僚や友達。受験も基本的に、誰かよりも優れていることが要求される。自動車学校というのは、「協力の教育」「協働の教育」になると思います。どうやって、安全な交通社会を一緒に実現するかっていう。今現在の教習所の教育って、どうしても試験対策の側面が強調されてしまう。丸暗記とかね。そういうのを少し変えて行きたいと思います。

私は価格競争もひとつの経営スタイルでしょうし、今話したように「教育」に特化していくことも、ブランディングという経営スタイルだと思います。ただ、Bigmapを作ったときには、正しい方向はどちらか、おのずと明らかになるようにはしたいですね。

今の若者たちの特徴をうまく捉えることによって、運転の技術や知識以上の何か、社会人となる上での習慣を気付かせてあげられるか、引っ張り出してあげることができるか、だと思います。自分を知るって言うことに関わらせたい。自分らしさとは何か、自分って何だろう?ということを考える時間や機会を与えられればいいと思いますね。なんか新しいものが作れる期待はあります。

 

— それって、就職前の若い人にとってものすごく貴重な体験ですよね。組織(企業)に属するってどういうことか、組織に貢献するってどういうことか、ほとんど考えたこともないし、質問されたこともない。そもそも労働するってどういうこと?っていう思考をしたことがないのではないか。社会に出ることもまったく同じですね。

 

中山:「自動車教習所」の「教習」って言う言葉は、すごく特殊なものに感じるんです。ほかに教習とつくものを、思いつかない。教習っていかにも、知識技術の伝達って言う感じがする。だけど「学校」になるともっと観念的なものが含まれてきます。従来の自動車教習所の生き方をしていく中で、地域の交通安全教育センターとして活躍してくださいというのもある。でも、これから教習所の価値を高めていく中で、やはり免許取得者への教育を目指していかなくてはならないでしょう。さまざまな人が、安全な交通社会を実現するために参加しなくちゃいけない。そうしたことも踏まえて、教習所は交通のこと全てを学ぶ「交通学校」という位置にまで高まってほしいと思います。

 

— 交通学校。いい語感ですね。

 

中山:自転車のり方も含めて、もしかしたら歩き方も含めて教える必要があるかもしれませんね。(笑)

 

 

■最後に、今後の取組と抱負

 

— そのほかの9次の研究の方向性として何かありますか?

 

中山:免許既得者への講習、一般的にいう「企業講習」に関して掘り起こしをしたいということは考えています。8次長期ビジョンの研究で、安全運転管理者に対する働きかけの研究がされています。国土交通省でいう運行管理者ですか。それでいうくらいの強制力や責任感を持たせたいというものです。9次でもこれを引き続き研究したいという意向があります。たとえば、全指連が(9次の研究で詰めて)カリキュラムやプログラムを制定して、全国共通のものとして各教習所に普及させて実施してはどうか?っていうアイデアは出ています。

 

— なるほど。統一規格として全国に普及できて、なおかつ全指連が認証機関として機能してくれば、一般企業からも認識されやすいでしょうし支持を受けるのも想像に易い。教習所の活躍のフィールドは広がりますね。法律を変える必要がなければ非常にスムーズに進行できそうですね。では最後になりますが、中山さんの抱負をお聞かせください。

 

中山:今日の安売りの価格競争の話は、日本各地で聞かれる問題となりました。他校が価格競争を仕掛けてきたので、対抗策として値下げをするという、もうどうしようもないスパイラルが起こっている。お客様に提供できる差別化が、料金割引しかないという現実があります。料金に勝る「何か」がない教習所、自身のアイデンティティとなる競争力や商品力がないことが、悲惨な結果を招いてしまっているとも感じています。

お客様に「安全運転の習得」を語っても、弱いと思うんです。お客さんから認めてもらえる「何か」を持たなくては、生き残れないと思います。私の事業所の場合は、「自立する個人」となるために、「自分というものを知ってもらう」「自分自身を学ぶ」事を提供していきたいと考えています。

 

— お客様に素晴らしい経験として残るものになるといいですね。社会においてあなたは今どこに位置していますか?という問いや、あなたは社会とどう関わっていきたいですか?という問いは、本質的な自立を促す気付きの瞬間だと思いますね。

 

中山:自分を学ぶ「自分学」とでもいいましょうか。そういうものが、安全運転への意識につながっていくならいいなと思います。最近生涯教育の本とか読む機会があって、よく考えるんですが、人間って一生学びなのだと思うんです。よりよい存在になりたいと思う生き物だと。そこをしっかりなぞっていけば、教習所に活路は必ずあると思います。それぞれの教習所、それぞれの経営者が独自の経営をされてよろしいと思いますが、よい結果に繋がってほしいですね。

ajima

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