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【第3回】Change 〜変わるもの、変わらないもの、変えてはいけないもの〜

[対談]

本田技研工業株式会社 四輪営業部北関東ブロック統括長、参与 藤沢晃生氏

澤田裕江君

日時 : 平成22年11月22日(月) 午後2時から

場所 : 埼玉県和光市 本田技研工業株式会社

 

【プロフィール】

藤沢晃生(ふじさわ・あきお)

本田技研工業株式会社、四輪営業部北関東ブロック統括長、参与

2010年度部会長対談の3回目は、本田技研工業の埼玉県和光市にあるホンダ研究所にて行われた。対談時、ホンダは「Fit」のハイブリッドカーを新発売し、国内市場にコンパクトカーのハイブリッド車を提供したところだ。エコカー購入の減税制度、補助金制度(22年9月末終了)などの影響もあって平成22年度の国内自動車販売数は活気を呈したが、その後の見通しは楽観的ではない。自動車という耐久消費財が、人々の意識の中であまり「高い地位」でなくなってから久しい。また若者の「車離れ」という現象に対し、何らかの対策をすべきではないかという考え方は、ほとんどの自動車メーカーが頷くところである。

澤田部会長も、こうした車離れの現状に「自動車学校としてできることが何かないか?」という提案を軸に対談が進められた。

 

■現代は車離れの時代?

 

澤田:テレビのCMを見てもそうなんですけれど、エコカー減税の話題ばかりですよね。子供と鹿のキャラクターが目立ってばかりで。(笑)クルマそのものに触れる機会が減っている気がします。今回「Fit」の発売でキャンペーン中だと思いますが、どのような状況か、ホンダさんの見解をうかがいたいのですが。

 

藤沢:私どもの営業のお話ばかりで、開発等のお話はあまり詳しくはできないのですが…

 

澤田:お客様と接する最前線の皆さんのご意見をぜひ伺いたいところです。また、自動車に関連する業界の方がやはり関心を持っているところですので、そんなお話を伺えればありがたいです。

 

藤沢:難しい言葉で申し上げますと、4輪の国内総需要は、バブルの頃780万台が売れていたんですね。今年は500万台切ってしまうだろうと。いろんな予測はあるんですが大体2020年ころには400万台を切って行くのではないかと。長期的には350万台を切るであろうとも言われています。間違いなく、車を買ってくださる方が減少していくのは確かです。しかし、なくなることは無いというのも確かです。首都圏で暮らす人の車の所有の仕方というのは変りつつありますけれども、地方においては1人に1台、プラス軽トラックや作業車となる。人口の割合にもよりますが、自動車の所有のあり方が急激に、また緩やかに減少していくでしょう。クルマの買い方、またクルマの「形」も変わっていくんだろうと。厳しいですね(笑)

 

澤田:私たちの業界もまったく同じ状況です。首都圏の皆さんは免許を取らなくても良いと。しかし地方にいくとそういう訳にも行かず、運転免許を必要と考える方はいらっしゃる。ですけれども、田舎では就職先がない。それで都会に出て行くと、車は必要なくなる。免許は取らないで済んでしまうと。少子化による人口減少よりも加速して、免許取得者の現象という社会構造ができつつあります。どちらの業界もお客様が緩やかに減少していく原因には、景気や環境の問題だという面もありますが、「クルマ離れ」という現象は本当にあるのか?ということがいま私たちが議論しているところです。いろんな推測は成り立つんですね。例えばゆとり教育の問題、また、本質的に人間は運転を嫌いなのでは?とか。データがない上に、教習所業界はマーケティングということが進んでおらず、お客様のニーズを把握していないんです。なぜ免許を取得するヒトが減少したのか?に関しても、憶測の域でしかないんですね。

 

藤沢:正直申し上げまして、これが原因だ!というものは見当たらないのではないかと思いますね。感覚的なことですが若い方に、お金が無くなってきているのではないかと。別に就職されている方の給料が低いということではありません。私が免許を取ったときの時代に比べ、お金の使い方が変わってきている。携帯電話に皆さんものすごくお金を使うでしょ?月に1〜2万。多い方なら3万円。それが消費のパターンを変えているんだろうと思います。

 

■いまどきの若いヒトって

 

藤沢:これは私の私見ですけれども、私の若いころは、見たことのない遠いところへ行ってみたかった。彼女を連れて、誰も行ったことのないところへ行きたいという願望があった。一人きり、またはプライベートな空間で、自由に、速く旅したいという欲求があった。で、この間電車に乗ってたらものすごくショックな出来事があったんです。電車の中で、若い大学生くらいの男の子が2人会話してたんですね。

「お前免許は?」「俺は要らない。都会派だからクルマいらない。」

もうショックで。ガツーンと響きました。今の若い人って、そうなの?と。免許を取って、車を買って、やりたいことをやって、夢を一つ一つ叶えて行くやり方が無くなったのかなと。

 

澤田:ヒトがパーソナルな空間を欲しがらなくなったか?と言うとそうでもないかもしれませんね。例えばお父さんや働き盛りの男性なんかは、一人の時間が確保できない。勢い自動車の中が楽しいと。そういう年代や時間帯のころってあるんじゃないですかね。

 

藤沢 テレビの報道番組でやってたのですが、今の若い世代の皆さんは、みんなといないと不安だというんです。一人でご飯食べることができない。で、一人で食べざるを得ないとき、どうされると思います?トイレでお昼を食べるんだそうです。

 

澤田:そういう方って、少なからずいらっしゃいますね。自分ひとりっきりだと恥ずかしいと。仲間がいなくて、一人きりで食事をしているように見られるのがいやだって。

 

藤沢:私なんかは一人の時間を大切にしたいし、かといってワイワイやるのも楽しみたいのですが、そういう若いヒトが減ったのですかね。

 

澤田:難しいですね、若い世代の成熟度を比較することもできないし、検証することもできませんしね。

 

藤沢:余談ですが、私の高校生の息子の話なんですが、何かわからないとすぐ訊いてくる。

まぁそれ自体は悪いことではないんです。で、「自分で考えれば良いじゃん」と答えると、「どうやって考えればいいの?」と尋ねる。もう本当に衝撃で。いろいろ聞いたら、やはり教育なんですかね、常にいろいろ指示されて、常に(選択肢を)与えられてきた。考えることをあまりしなくなってきている。個人差はあるんでしょうけれども、それが自分の欲求そのものを削ってしまっているのではないかと思うのです。どこに行くにも、何をするにも集団で行動する。少し心配なことです。

 

■「自分で考える」という事

 

藤沢:自動車学校では今どうですか?そういう困り事はありませんか?

 

澤田:教習中に「自分で考えろ!」は、ありませんね(笑)。わからないから来てるんですから。男の子がお母さんに連れれて教習の申し込みに来るんですね。で、自分で予約を取ることができない。予約が取れないと、もうそこで断念してしまうんですね。じぶんで決定したり、交渉したりできない。そういうことで言えば、まだ女の子の方がしっかりしてますね。

 

藤沢:教習所ではまだ補助ブレーキを踏んでくれるし、ハンドルだって危ないときはサポートしてくれる。これからいざ一人で社会を渡っていくときの、一つの大きなハードルになっていますね。

 

澤田:命に関わることですからね、自分で判断するって事ができなくては…。

 

藤沢:非常に怖い話ですね。

 

澤田:責任という事にも気がついていただかなくてはいけませんね。他のヒトの生命にも関わるし。

 

藤沢:これは大変なこと。親御さんが過保護になっているのですかね。中学生ではない、18歳の方がそんな風では。でもそういわれてみると、昔の販売店であったことですが、それでも一人できましたよ。18歳だから、もう自立するって。じぶんでクルマを買うと。まぁ実際は何もわかってなくて、ローンの組み方や生活費のバランスなんかも相談に乗りながら、お客さんとのやりとりをしたものですけれども。いまは一人で販売店に来ませんね。親と一緒に来る。親の許可を求めながらいらっしゃる。いまこういう時代ですから、製品の情報は何からでも取れます。ほしい車をもう決めいらっしゃるんですよね。そうすると、会話が成立しないんです。あまりお話をしてくださらない。売るほうとしては辛いんですよね。どんな場面で車を使うのか。どんな楽しみにこのクルマをイメージしているのかが、わからない。年配の方のほうが、楽しむためにこういうものがほしいという要求があるんですが、なんか若いいヒトが元気がない、って言うか夢がないんですよね。

 

■自動車という夢の塊、ワクワクする感じ

 

藤沢:クルマって、四輪も二輪もそうですが、夢の塊じゃないですか。自分の思うとおりになるものですよ。ワクワクするものなのに、なんか違って捉えられている。免許を取って、初めて親父のクルマでドライブしたときに、「自由を得た!」って感動したものですけどもね。

 

澤田:確かにそういう感覚は薄くなっているかもしれませんね。

 

藤沢:世の中の一員になれたって言うか。ルールを守ってきっちりやることで、一人前に成れたとも思ったものですがねぇ。いまどうしてそういう感動がないのか分からない。

 

澤田:別の勉強会で、こういう問いかけがあったんです。「自動車学校は社会人になるための予備校だと捉えていますか?」クルマに関わる自分の人生がどういうものであるとか、自分の人生を豊かにしてくれる自動車とどのように付き合っていくかって云うことに、自動車学校がもっとコミットしていく必要があるということなんですね。まったくその通りなんですが、現実底まで踏み込めていない。それは自動車学校の仕事ではないという経営者までいるくらいです。若いヒトに限ったことではないのですが、もっとクルマに対して意識を高めてもらいたいし、逆にこちら側もクルマを通じた何かに対して関わっていかなくてはいけないんだろうなと思います。

 

澤田:ホンダさんとしては、いろんな取り組みをされていると思いますが、製品自体にどんな思いを込めていらっしゃいますでしょうか?

私はクルマのデザインも含めてなんですが、ワクワク・ドキドキする感じを期待しています。いろんなワクワク感があるとは思うんですが、ルックスがどのメーカーさんも保守的になってしまって、そういう感じの車が少なくなってきてるように感じますね。

 

藤沢:私も個人的に同感です。例えばハイブリッド車ですが、うちのインサイトとT社のPシリーズなんかは、どっちが真似したかどうかは別にして、発売前に比べたときに「なんかにてるなぁ」という感じは否めませんでしたね。研究開発の部署に言わせると、空力性能上、これが究極の形だと、いうことでしたが、本当に初期の段階でのイラストなんか見ると、まさにワクワクする車なんですよね。これ出てきたらすごいよね!ていうのはあったんだけど、出来上がったものを見るとずいぶんおとなしくなっちゃうんですよね。どうしても似たような形になっちゃう。作ってる皆さんには申し訳ないんだけど、売る側としては面白くなくなっちゃうんですよね。お客さんが車を選ぶときに何を最初に検討するかといえば、まずはデザインなのですね。ぱっと見の印象なんです。最初のデザインが気に入られなければ商品にはならない。今日は良い言葉をいただいたと思うのですが、「ワクワクするデザイン」のクルマを、なんか欲しくなっちゃうデザインのクルマをきちんと提供すること、そしてそのクルマといろんな夢を描けるような製品を提供して行きたいですね。その次に時代に合わせた、プラグインハイブリッド車、EV車、Co2排出ゼロな自動車を考えていきたいですね。

 

■HONDAの方向性

 

藤沢:本当にお客様に、胸を張ってお勧めできる商品をホンダは今、考えています。燃料電池車の「FCXクラリティ」というものがあるのですが、今現在は、とても商品になる価格でないんですね。多くの人にできるだけ安価で提供できなくては意味がありませんからね。ホンダは大体10年毎にビジョンを作成しています。2020年へのビジョンとしまして、「良いものを、はやく、安く、低炭素で」提供しようというものがあります。誰でも手にできる価格で、早く供給することを実現しようと取り組んでいます。次の世代の子供たちに、環境を含めツケを廻してはいけないと思うんです。クルマがそんな風に変わっていけば、地球の空気もどんどんきれいになって、いろんな夢が実現されていくという。そのうちクルマも空を飛ぶようになるでしょうし(笑)「良いものを、はやく、安く、低炭素に」そんな世界を実現できたらいいなと思ってます。

 

澤田:NHKの「プロジェクX」でも取り上げられましたが、米マスキー法に対応するエンジンを開発する時の合言葉に「青い空を子供たちに残すんだ」というものがありました。今も開発の皆さんはそういう意気込みで取り組んでおられますか?

 

藤沢:もう至上命令ですね。いまはFitのTVCMが主に流れていますが、このパーツを1ミリ短くするんだと。1グラムでも軽くするんだと。それが低炭素を実現することになるという強い思いは出ていますね。Fitばかりがクルマではないのですが、コンパクトカーというものが、今非常に重宝がられている。使い勝手がよいということで主体に考えています。ですがいつか、もう少し多様なサイズが欲しいお客様もいるし、したがって派生的にさまざまなタイプも出てくるでしょうね。

 

澤田:Fitをプラットフォームとして展開していく方向であると。

 

藤沢:開発のコストを考えると、使えるものは使っていくほうがいいですからね。ただ、これはうちの研究所の傾向なのですが、「このクルマにはこれでなきゃだめなんだ」って云う強いポリシーを持った開発者が多いんですよね。最高のものを求めるのにはどうしてもこの技術が必要なんだっていうこだわりが、ホンダらしさなんでしょうかね。

 

澤田:ホリデーオートさんなんかにはNSX再始動みたいな記事が突然根拠もなしにでてましたが、やはりそういうスポーツカー的なものは今は難しい状況にあるのでしょうか。

 

藤沢:NSXについては未確認ですので申し上げられませんが、スポーツといえども「低炭素」の枠組みから抜け出すことはないですね。今回カーオブザイヤーをいただきましたCRıZなども、ハイブリッド車で、低炭素でスタイリッシュな2ドアクーペというもの、ああいったものを無くしたくないなって云う空気はホンダの中に強くあります。だって、かっこいいじゃないですか(笑)ほしいなぁと思いますもの。

 

澤田:先ほどの話にまた戻るのですが、おうちのクルマがそういうクルマじゃないんですね。そもそもそういう楽しさっていうものを知らないんじゃないでしょうかね。実用性の高い車がかっこいい車になってしまっているように思えますね。

 

藤沢:私の学生のころはプレリュードという車があって、それが欲しくて、ついホンダに入社してしまった…(笑)今社員にどんな車が欲しい?って訊くと、「欲しい車がない」と返ってくるんですよね。寂しいことだし、残念なことですね。最近良くホンダらしさが無くなったといわれます。「じゃぁ、ホンダらしさってなんだろう?」という問いには、やはりみんな考えていますね。社長がいう「世の中にないものをつくれ」っていう言葉は本当にホンダらしさを表しているのかなと思います。まったく新しいこ発想で、新しい事を、新しい考え新しく行動すると、解釈してます。今までのやり方ではダメで、そういうやり方がホンダらしさなのではないかと。

 

■若い人たちが自動車学校になにを期待しているのか

 

藤沢:そうやって考えると、自動車学校さんて、昔から何もやり方が変わってないんじゃないでしょうか。場内で練習して、仮免許があって、路上で練習して卒検があるっていう…。

 

澤田:そうですね、何も変わっていないですね。

 

藤沢:まぁ法の定めるところにしたがって行っていかなければいけないんでしょうけれども、その自動車学校にしかない「何か」をもっと創ることはできないでしょうか。「若者たちが期待していること」をやろうとしてもぜんぜんダメですよね。そうじゃなくて、想像もしてなかったようなことをやるくらいな意気込み出なくては、できないとは思いますが。今までの自動車学校とは何か違うぞって。

 

澤田:付加価値の部分については、確かにその通りです。

 

藤沢:「わぁ、すごい!」っていわせる何かが、若いヒトを感動させるのだと思います。それが価値だと思いますし、まぁそんなに簡単に見つかるわけないですが(笑)

 

澤田:日本人だからこそ、そういう新しいものを創造できるのではないかと思っていたのですが、そうばかりでもないようですね。

 

藤沢:というよりも、新しいモノや、今までなかったものをのを受け入れることに、日本人は優れているんでしょうね。EVは、実はホンダは10年以上前にもう試作しているんですよね。ハイブリッドにしても、ずっと他社より早く完成させている。なのに、売れないのはうちの営業のやり方が悪かったのかなぁと反省せざるを得ません。ぜんぜん受け入れられなかった。後から来たT社の相乗りみたいな感じになってますね。世の中へのPRの仕方の重要性はしみじみ思います。これだけの性能に持てる限りの技術を詰め込んで、目いっぱいの価格をつけましたんでぜひ買ってくださいって。きちんと伝えなきゃいけませんね。

 

澤田:そういうことを期待されるって言うことは、やはり大事なことですね。

 

藤沢:期待されない企業では困りますけれども、期待に応え続けるのも辛いものがあります(笑)

 

澤田:最後になりますが、教習所として、20歳前後の若者に「クルマに乗りたい」と思わせることが課題だと考えています。子供のころからクルマを運転する楽しさを伝えていかなくてはいけないと思います。自動車メーカーさんや損保会社さんとタイアップして何かしらのアクションをできればうれしく思います。

 

藤沢:それはいいですね、喜んでお手伝いしたいです。逆にお知恵をいただきたいくらいですね。若い方に免許を取っていただかないと、車も売れませんし(笑)

ajima

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