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【第2回】Change 〜変わるもの、変わらないもの、変えてはいけないもの〜

[対談]

日産自動車株式会社 商品企画本部 日本商品企画室 主管 川嶋則生氏

日産自動車株式会社 関東カンパニー リージョナルマーケティングマネージャー 愛澤正樹氏

澤田裕江君

日時:平成22年3月25日

場所:日産自動車株式会社 横浜本社

 

【プロフィール】

川嶋則生(かわしま・のりお)

(株)トヨタマーケティングジャパン プロデュース局局長、子供店長CMなどヒットシリーズの製作に関わる

愛澤正樹(あいざわ・まさき)

2010年度日本青年会議所教習所部会部会長、(株)銚子大洋自動車教習所 専務取締役

本年度第2回目のゲストには、日産自動車株式会社の川嶋氏と愛澤氏に登場いただいた。挨拶も早々に、「私がぶっちゃけた話をしてしまうといけないので…(川嶋氏)」「だから私がブレーキ役で参りました(愛澤氏)」(笑)と、打ち解けた空気の中で対談が始まった。日産の明確な意思を、力強く、そして心から楽しそうに熱く語っていただいた。これからの日本のものづくりに、そして自動車産業に期待感が高まる対談となった。

 

■自動車離れの分析

 

澤田:今若い男の子が、自動車に関心を示さない、興味を持たないような、時代になっています。「鉄ヲタ」な方が溢れているように、自動車以外の何かにものすごく盛り上がりを見せています。日産さんでは、「車離れ」について、何か分析はされているのでしょうか。

 

川嶋:私の部署では直接やってはいませんが、市場を調査分析する部署がいろいろやっています。たぶん結論や正解というのがなくてですね、いろんな考え方に基づいた、推察みたいなものは出てきています。我々の世代で言うと、ほんとに自動車が大好きなユーザーさんの世代というのは、やはり車がひとつのステータスだったし、憧れであったんですよね。私もそうだったのですが、まず最初は親父のすねをかじって、親父の車を乗り回し、中古車を探し、いずれは自分の自動車を手にしてと。車がひとつのお客様の広がりといいますか、行動を広げる、価値観を広げるひとつの道具として、車、車、という時代があったのだろうと思うのです。 ところがですね、そうやってお客様の価値観を広げていけるものって、現代においては山ほどあるんです。そのひとつがIT社会ですね。ネットで繋がることによって、個人が持ついろいろな欲求や好奇心を満たしてくれる、大体充足してくれる世の中になったと、分析しています。 私どもは車が売れての商売ですので、そういう時代背景と真っ向から戦うことは考えませんが、やはり自動車になんらかの新たな価値観を宿していかなくてはならないとおもいます。このままのトレンドが続いていくとしたら、どんどんお客様の車離れの現実は進んでしまいますし、私どもとしても危機感を持っています。

 

澤田:モノや人が豊かになって、社会が成熟した結果が、こういう世界だったと云うのは、予測できないですよね。

 

川嶋:ただ、もう一方で、「車は本来楽しいもの」だっていうところは、日産は絶対忘れてはいけないと、思っています。 今度「リーフ」という新しい電気自動車が出るのですが、こういう質問を良くされます。 電気自動車(EV)って比較的、簡単にできちゃう構造だと。エンジン下ろして、モーター入れて、インバーターつけて完成だと。最近の報道で中国のEVの生産が盛んであることが報じられる中で、「日産さん大丈夫ですか?」とよく問いかけられます。 「誰でもEVって、作れちゃうんじゃないですか?」と心配してくださる。 これから日産がEVで頑張っていこうとしているのはわかるけれども、何もみんなができるところへ船出していくことはないんじゃないのという、心配を含めてのご質問なんですね。

 

■変化していく「時代」と、変化しない「自分らしさ」

 

川嶋:そのときに私がお答えしているのは、「普通のEVは作ってません」ってことなんです。 走る楽しさだとか、お客様がわくわくするような「車づくり」がベースにあって、その上で、たまたまエネルギーがガソリンから電気に変わったという立ち位置は貫こうと思っています。 どんなに世代が変わっても、車そのものが提供できる「運転の楽しさ」というものは、これからハイブリッドだろうがEVであろうが、絶対そこははずさない。我々が過去ずっと培ってきている技術力だとか、お客様とのコミュニケーションだとかで持っているアセットというかノウハウが沢山あります。それをベースに、このリーフを作っています。もし機会があれば、ご試乗いただきたいですね。売り込みをしているわけではないのですが(笑)、フェアレディZやスカイラインに乗ってきたお客様が、自分の車を置いていくから、市場されたEVを乗って帰りたいとおっしゃります。(笑)

 

澤田:素敵ですね(笑)

 

川嶋:やっぱり、時代の変化やお客様のニーズの変化に合わせていくことはしていきますが、日産自動車と云うカラー、アセットというものは、自動車がどんなに進化しようとも時代がどんなに変わろうともそこは変わらないと思います。

 

澤田:変わってしまうものにあわせていくことと、絶対に変えていかないものが並列して、尚且つ成立しているんですね。

 

川嶋:ドライビングプレジャーというか、今度はピュアドライブとかいうのかな。日産の取り組みとしてそういう視点があります。

 

澤田:偶然ですね、うちの会社でも運転する楽しさ、初心の緊張感、純粋な気持ちというものを「ピュアドライブ」としていました。

 

愛澤:今年はリーフを初めとしていろんな新しい自動車を提案していきます。燃費や環境という課題はやはりテーマにあります。「環境負荷が低い自動車」であることと、「運転が楽しい」「走ることが楽しい」ということは、成立すると思います。昔のように、黒い煙を吐きながらスポーツカーで走ることよりも、やはり環境負荷が少ない車で走るほうが、素直に楽しめると思うのです。きっちりエコなんですけれども、楽しい、ワクワクする自動車。こういうことを含めて「ピュアドライブ」と表現して行きます。澤田さんがおっしゃった事と根っこは一緒ですね。

 

■日産の戦略、教習所との協働の可能性

 

澤田:それでは、リーフ※1のお話が出ましたので、開発の経過や今後の展開について伺いたいのですが。

 

川嶋:会社の方向性として、「ゼロ・エミッション」という切り口の中で、業界のリーダーを目指すと、トップマネジメントが決定したので、それに向かって日産は邁進しているところです。そのソリューションの一つがEVであったわけです。 「ゼロ・エミッション」という冠があるので、排気ガスが出ない車種の担当になったくらいの認識で、この部署に飛び込んでちょうど1年になります。ばたばた仕事をこなしてきたんですけれども、一番大事なのは、EVを創ることではなくて、「ゼロ・エミッション」の世界をどうやって創っていくのかということなんですね。 ちょっと口幅ったい言い方ですが、EVは排気ガスが一切出ない。CO2だけじゃなく、Nox、Hc(ハイドロカーボン)など。つまり、これまでエコカーとして減税を国から受けてきた自動車とはまったく範疇が違う自動車です。ところが、真摯に受け止めると、充電して走る車です。その充電は、まだまだ化石燃料で発電している。発電段階で、残念ながらCO2が発生してしまうんです。日産は「ゼロ・エミッション」を掲げているので、EVを販売すれば、それで好いという訳には行かない。 私はこのプロジェクトとは別に、発電する段階で日産自動車が社会にお役に立てることがないのか?という検討も、別なグループの一員としてやっています。 具体的には、リーフは24Kwhという、大体一般のご家庭の2日分くらいの電気容量をバッテリーに貯めています。また、皆さんがお持ちの携帯電話のリチウム電池は、毎日充電すると2〜3年で性能が落ちてしまうと思いますが、リーフのバッテリーはよい意味で想像を裏切るくらい、素晴らしい性能なんです。10年使っても、バッテリーは生き生きしてるんです。一般のお客様に使っていただいたとして、車本体は寿命でも、バッテリーはまだOKなんです。 そういったバッテリーを、もっともっと、たとえば太陽光発電や風力発電など、クリーンエネルギーで充電できないかと。発電段階でCO2を出さないようなシステムを、作り出せないかということまで考えています。自動車メーカーが開発したバッテリーを、社会がもっと転用してくれるような仕組みが創れないかとを考えています。日産としては「ゼロ・エミッション」をそこまで捉えて考えています。

 

澤田:「蓄電器としてのEV」というイメージは出始めていますよね。ご家庭での太陽光発電などからの蓄電のシステムから始まり、災害時のライフラインの確保という、広い視点でEVの機能が捉えられている。問題は消費者が理解できるかどうかなんですよね。こういうときに教習所業界は何ができるのかなと、感じます。

 

川嶋:この対談の話をいただいたときに、教習所という観点から見た時に何ができるか考えておりました。いま、ガソリン自動車からEVに切り替わる時です。これを世の中の人にどうやってご説明しようかと取り組んでいます。今年の暮れにはリーフが発売されますし、そのときには今までと違ったことをしなくてはならないと。 で、ガソリン車とEVは何が違うんですか?を、伝えることからはじめなくてはいけない。これは、ものすごく同じところと、違うところがあるんですよね。 僕は、教習所にEVって、めちゃくちゃ向いているなと思っているんです。なぜなら、走る距離は決まっているし、夜は走らないから一番安い夜間料金で充電しといていただける。EVのディスアドバンテージっていうのは、現時点では航続距離なんですね。教習所ですとか、ハイヤー業界でしたら、ある程度走行距離が読めますよね。不安なく、利用いただける業態だと思うんです。特に教習所は1日の走行距離は読めますので、コストダウンも可能となるでしょう。新しく生まれてくるソリューションですから、若い皆さんに興味を持っていただけるよう、車以外の装置にもいろいろ工夫しています。 こういうものって、教習所向きなんじゃないかなって思います。 で、ガソリンとEVの違いってやはりあるんですよね。EVって、常にモーターを回し続ける高速走行がどちらかと言うと苦手とか。

 

澤田:そうなんですか。

 

川嶋:逆に、山坂道ですとか、GO&STOPを繰り返す走行が、その程度によりますが得意なんです。ガソリン車が苦手なモードです。たとえば下り坂は、ガソリン車であれば、エンジンブレーキを使って坂道を下ってくる。EVは、回生ブレーキ※2を使って発充電しながら下りてきます。そうすると、燃費がEVの方が良いケースもあります。思ったより燃費がいいと。

 

澤田:確かに、運転の仕方が変わりますね。

 

川嶋:それと、トルクがすごく太い。リーフはフェアレディZやスカイラインと同じくらいのトルクがあります。教習の仕方が変わって当然ですよね。

 

澤田 社会や自動車がこれだけ進歩しているのに、教習カリキュラムが追いついていない現実はあります。たとえば自主経路という項目があって、地図を見て運転を計画させる教程があります。もうほとんどの車にカーナビが入っている現実に、うまく噛み合ってない。 カリキュラム以上の教習を行う教習所がないのが現実です。生産性が落ちるということですね。新しい自動車が提案されて、社会が今変わり目のときを迎えている時に、何ができるかということですよね。

 

川嶋:たとえば、EVの体験の時間が別にあってもいいかもしれませんね。いつ社会がEVに全面移行するかはわかりませんが、経験しておくことは大切ですよね。

 

澤田:ある自動車学校さんでは、AT車をすべてトヨタのプリウスにしたところがあります。だけれども、ガソリン車のに乗ったことがない教習生は、やはり経験不足から怖いといわれるそうです。過渡期の今はEV、ガソリン車どちらも体験させることが必要だと思いますね。

 

■エネルギーの変更、システムの変わり目

 

この対談が行われる数日前に、国会の審議でいくつかの法案※が成立した。自民党政権時代には「低炭素社会の実現」の名目の元、現政権では、自動車産業のブラッシュアップとフォローを目論んだ内容のものだ。国民にとっても新車購入の補助金制度は魅力的にうつる。新しい製品としてのEVは、社会にどのように浸透していくのだろうか。

 

澤田:EV普及のための法律が昨日審議されました。今こうした変わり目のときですが、たとえば自動車学校に電気スタンドがあっても良いですね。

 

愛澤:そうですね。普及に当たって、ガソリンスタンド、つまりEVのエネルギーサプライヤーの問題はありますよね。EVは、家で充電が基本です。急速充電器のように初期投資にコストがかかるものもありますし、普通の100Vでゆっくり給電するスタイルであれば、コストはかさみません。継ぎ足し継ぎ足しすれば、家までは帰れるんです。あまり過大な投資は必要としないかもしれません。東京-大阪間のように、長距離を運転する場合には急速充電器は必要ですが、自分のまちの中を走る分には、何も問題ないですよね。

 

澤田:いま、何キロ四方に充電所が1つあればいいかという研究も進んでいるようですね。

 

川嶋:そのとおりです。私ども日産自動車は、パイロット生産ではなく、通常のガソリン車と同じようにEVの販売を考えています。日産には、全国で約2200の日産の販売店があります。その販売店にはまず普通充電設備を設置します。リーフの販売に合わせて進めたいと考えております。日本地図で、どこに充電システムがあるか示すことができるようにしたいですね。

 

澤田:こういう社会の変わり目のときに、自動車学校としても存在感を示したいですね。車を乗る楽しみをどうやって伝えればいいのか、車を乗るということへの社会性というものを身に着けて欲しいと思うんです。そういうところで、メーカーさんはお客様のニーズをどう捉えているのかぜひお伺いしたいところです。

 

川嶋:抽象的な答えになってしまうのかもしれませんが、5年、10年先のお話をすると、車は、よりもっと身近なものになっていく世界があるのではないかと思っています。私の社内での役職というのは、お客様が期待しておられる、将来お客様が望むであろう事を、企画に反映する仕事です。そのお客様と、社内のものづくりをする部署との中間にある部署なんです。「将来のお客様が望んでいるであろうクルマ」というのは、もっともっとコンパクトなものになっているであろうと。今の日本のマーケットを見たところ、そういう兆しが出ている。たとえばスカイラインやフェアレディを愛してくださっている皆さんもいらっしゃいますが、自動車は、パソコンや携帯がそうであったように、もっともっと身近なものに、もっともっと生活の一部になるような存在になる気がしています。

 

■これからの日産のクルマとは

 

川嶋:僕が今、気にしているのが、軽トラック。地方のおじちゃんが乗ってるあれですよ。うちの親父も軽トラックでした。周りの人もほとんどそういう時代でした。なぜか。乗りやすいからですよ。小回りがきくし、手ごろだから。便利なんですよね。それでももう一台グロリアも所有していました。それは見栄だと。ステイタスなんだと。 言いたいのは、自動車がもっと手ごろなものに、身近なものになっていかないと、敷居が高いままだと…。世の中の皆さんはそう思っていると思うし、若い皆さんはめんどくさいこと大っ嫌いじゃないですか。そういうウザイ感じじゃなくって、クルマのほうから擦り寄ってくるような、そういう商品にしていかなくちゃいけないなと思います。 軽トラックのようなコンセプトの、EVの可能性もありかもしれないし、価格面でも100万円を切るくらいな身近さにならなくてはいけないと思ってます。

 

澤田:三菱自動車さんのiıMiEVでしたっけ、ああいう感じですか?

 

川嶋 モーターショーに出品するコンセプトカー等を通じて、お客様がどう反応して下さるかを調べるのもある意味マーケティングなんですよ。例えば、去年の東京モーターショウで出展した、ランドグライダー※3。結構な反響をいただいてます。若い人もそうですが、年配の人が、「あれ良いじゃん」とおっしゃってくれる。

 

愛澤:「カジュアルシティムーバー」と位置づけています。二人乗りのバイクのように、タンデムにして乗るんです。車の幅は小さいし、サイズは小さいし、何よりバッテリーにかかる負荷が少なくてすむ。コンパクトになって、走る楽しさがある。シティコミューターとして街中を乗るEVとして提案しました。

 

川嶋:いただいた質問に直球でお答えできてないと思いますが、クルマを、もっともっとお客様の身近なものにしたいと思います。肩肘張らないような存在になってほしい。マーケットとキャッチボールしながら新しいコンセプトを実現したいです。僕は今EVにどっぷりなんで、なんとなく見えてきていることなんですが、EVがソリューションの一つに上がるならば、もうリビングにクルマが止まっている時代は本当に遠くないと思います。

 

澤田:グーグルさんなんかは、「スマート・グリッド※4」の概念ので、そういう事を言い始めてますね。

 

川嶋:そうですね、もっと白物家電に近いような存在になるかもしれませんね。そんな手ごろ感や身近さ。でも、それでも、日産はドライビング・プレジャーは絶対はずさない。企業の姿勢として、お客さんが望んでいる望んでいないではなく、日産からのメッセージなんですね。

 

澤田:トヨタさんの対談のときにもお話したんですが、わくわくしないクルマって、私はやっぱり残念な感じがしますね。

 

愛澤:「わくわく感」と言うキーワードですが、Zやスカイラインが持っている車の質感は特別なものがありますが、ドライビングプレジャーという「走りの楽しさ」はどんなクルマでも持っているだろうと思うのです。ただ、例えば、女の子に訊くと、車に乗ることで何が楽しいのかって言うと、車の中で聴く音楽が楽しい、また、彼氏と思いっきり話ができることが楽しい、という。生活の中のさまざまなシーンで「わくわく感」があって、「絶対的なスピード」が価値ではない。スピードやハンドリング性能だけがドライビングプレジャーの全てではないと思いますね。私たちはそういうものも含めたわくわく感をクルマに宿したいと考えています。

 

川嶋:私が暖めているコンセプトの一つは、永遠に人間の中にある欲求の一つである、「楽(らく)」です。楽は、必ずみんな求めますよね。車がしてあげられるこの「楽」って言うキーワードをどうやって具現化するか、これから先の商品のコンセプト・アイテムとしてずっとあり続けると思います。必ずヒットするような装備って、「楽」に当てはまるんです。ナビゲーションシステムは、最初なんだかわかんなかったのに、今では行き先を喋るとナビが勝手に何でもしてくれる。ワンボックスカーの後ろのスライドドアだって、オートですよね。アラウンドビューモニターも。「便利」と、「楽」は、微妙に異なると思います。

でも、「楽」を実現したものは、必ずヒットしてます。クルマの全体としてのありようも、もっと「楽」にあって良いんじゃないの?ということなんです。これはずっと先まで続くコンセプトネタだと思います。お客様の思ってることを言葉にして、ビジュアルにして、開発に投げて、日産自動車が持っている技術力やシナジー効果をミートさせることが私たちの仕事ですね。 ここから先は、もっとお客様との会話をしていかないと、高飛車な視線ではやっていけない気がしていますね。

 

澤田:私もそうなのですが、今ボリュームゾーンとなっているのが、団塊Jrの世代、1970年前後生まれの人たちです。その年代は世の中のパワーゾーンでもあると思うんです。そういう世代に対しては、どのように分析されていますでしょうか。

 

川嶋:各世代の方々の、「世代」という切り口と、「ライフステージ」という切り口から弊社の場合考えています。同じアラフォーの世代の方でも、独身の方もいれば、既婚の方、既婚でも子供がいるか、いないか。セグメントすることでお客様のニーズをきちんと定めていきます。日産では車の開発にあたりかねがねそういうことはしていますが、どこにミートさせるかメッセージを持って出さないと、いけないと思います。 お子様のいるアラフォーの方であれば、そのお子様をどのように考えているかということなんです。昔は、「俺が全てを決めるんだ」というお父さんがいました。子供は後ろで窮屈に乗ってればいいと。しかし時代が変わって、家族でも、もっと仲良くアットホームになれる装置としてのクルマ、ワンボックスカーとか。また、ペットって今すごくウェイトって高くなってきていませんか?そこでペットに媚びた商品を出せばいいってものじゃないんですが、直球の答えにならないとは思うのですが、細分化した中での、その世代の理解というものが必要となると思います。その中で商品の作りこみをしていかないと、商品自体がボケてしまうと思うんです。絨毯爆撃のように、メーカーが作ったものが売れる時代はとっくに終わっていて、効率的に整理したうえで、「こういう方に買っていただきたいんだ」っていうメッセージ性は、どこのメーカーも持っていると思います。

 

■魂が揺さぶられるクルマ、魂が“ぶっ飛ぶ”クルマ

澤田:プロダクトされたものが、人の期待を超えなくなったのかもしれませんね。人の商品への期待のほうが大きくなってしまった。だから、こういう変わり目のときに出てくる商品ってすごく大事なのかもしれませんね。

 

川嶋:私は日産に入社して26年になるんですが、技術職としてスタートしました。クルマが好きで好きで。その私が今まで2回、ぶっ飛んだことがあります。ぶっ飛ぶって言うのは怪我したとかじゃなくて、気持ちが弾けてぶっ飛んだ事があるんです。最初にぶっ飛んだのは、セドリック、グロリアに初めて搭載された、エクストロイドCVT※5って言う、メカニカルなCVTなのですが、あまりたくさん作れなかったんです。これを弊社の栃木のテストコースで試運転したときに、このクルマ、このまま空飛ぶんじゃねぇかと、思ったんですね。ぶっ飛びましたね。そして2回目にぶっ飛んだのが、このリーフです。 追浜のテストコースで試乗したときに、こりゃぁすげぇ、と。(遠いところを見つめる目)

 

澤田:こういう外観でも、スカイラインを上回るトルクがあると、思うくらいなんですものね。

 

川嶋:ほんとにお客様が、「早くこれのスポーツカーを出せーっ!!」って言うくらい(笑)

 

愛澤:エンジンとミッションというメカじゃないんで。モーターなので、立ち上がりが一番早いんですよ。

 

川嶋:クワァーッ!って奔るんですよ!アクセル踏んだ瞬間にこんなですよ(後ろにのけぞる)。このかっこしたクルマが(笑)

 

愛澤:市販するときには、そんなびっくりするくらいビャーッと飛び出すんじゃなくて、ちゃんとこう、安全な発進になってますけど(笑)

 

川嶋:そう、そうですよね、(笑)

 

愛澤:ただ、特徴としては、圧倒的な加速のよさは、別次元のものですね。

 

川嶋:前輪と後輪の間に重量のあるバッテリーをバランスよく配置してあります。その結果、メチャクチャ操安性※6がいいんですよ。低重心でバランスがいいから。テストコースのバンクにピュッと突っ込むんですけど、ビタッと安定するんですよね。これがほんとにすごい。 正直、EVの担当になっとき、「ゴルフ場のカートの担当かぁ」と(笑)思ったんですけれども、いい意味で大きく期待を裏切ってくれました。だから、乗って楽しいクルマに仕上がってるのは間違いなくって、Zやスカイラインで培ったノウハウを盛り込んでいきますから、相当凄いですよ。宣伝ばっかりで恐縮です。(笑)

 

澤田 サーキットでリミッターが切れるスポーツEVもできるかもしれませんね。

 

川嶋 ええ。できると思います。

 

澤田 いいですね。乗ってみたいなぁー。(笑)

 

■対談の最後に一言

情熱的に、しかも本当に嬉しそうに、楽しそうに解説してくださる川嶋、愛澤両氏の自動車に注ぐ愛情を感じた一日であった。話は尽きないのであるが、対談もいよいよクロージングへ。

 

川嶋:リーフは全車ナビゲーションを標準装備にしたいんです。いろんな気持ちがあってですね、ITって云うものとEVって云うものをきちんと組み合わせて、新しい世界を実現したいんです。楽だったり心地よかったり、そういう、EVならではのものを宿せないかと思っています。 実際、航続距離が限られる場合、現状の航続可能範囲を、同心円でナビ上に表示していきたいんですね。どこまでいけるのか。また、どこに充電スタンドがあるのか。これはオプションではなく、標準だろうということで取り組んでいます。又、リーフには通信機能を搭載させます。携帯電話を一つ積んでると思ってください。充電が完了すると、クルマから私の携帯に充電完了とメールが入る仕組みなんですね。また、家に帰る前に、エアコンを入れておくことがクルマから指示ができるようなことを可能としています。

 

澤田:聞いていると楽しくなってきますね。教習車としてほしくなっちゃいますね。販売価格はどれくらいを予定されてるんですか?

 

愛澤:まだ公表できないんですが、国からいただく補助金を入れて300万円くらいで出したいと考えています。で、これはガソリン代がかかりませんので。そこで量販したいと考えています。 (12月に市販開始される際の価格は376万円、補助金を考慮すれば299万円と云う内容が3月末に正式に発表された。編者注)

 

澤田:随分リーズナブルな価格ですね。

 

川嶋:いま、リーフは燃費どれくらいですかという質問をよくされます。一般的に世の中で報道されている「電費」とうのは、昼間の電力料金で充電された場合で、1キロ走行するのに約3円かかるといわれています。で、夜間の安い電力料金では、1キロ当たり1円といわれています。で、ガソリン車と比較するときに、計算を単純化して1キロ当たり1.2円としました。で、ガソリンの1リットルあたりの単価を、これも計算を単純にするために120円/ℓとしました。そうすると、1キロ1.2円で走る車が、120円使ったら、何キロ走れますか?という計算にしました。つまり、100キロと。ガソリンと比較するのであれば、100キロメートル/ℓということです。 同じクラスのハイブリッド車と比較すると、単純に2〜3倍走るって事ですね。

 

澤田:それでは最後になりますが、5年後、10年後の話がありましたが、免許を取得するために若年層にもっと車を身近なものにしようと、教習所の若手経営者が話し合っているのですが、日産さんでは何かそういう取り組みはありますか?

 

愛澤:工場見学は効果的だと考えていますね。子供って、基本的に動くものが好きじゃないですか。工場見学の中でも自動車の生産工場の見学は人気ですね。根源的に車を動かす楽しさって、子供の持ってるそれと繋がってくると思うのです。子供のうちから関係を持たそうって言うのは、私どもも共感するところです。草の根的に、いろんなところで車の楽しさを伝えていかなくちゃいけないと考えています。どうしてもキャパシティの問題で、全ての学校の方に見学いただけないのが残念です。日産を好きにってもらいたいということは、切に願うところです。

 

澤田:なるほど。今後ぜひいろんな事で協力できることがあればぜひ何かしたいですね。 今日はお二人があんまり楽しそうに語られるので、是非リーフを買わなくてはいけないと思ってしまいました(笑)。本日はありがとうございました。

 

川嶋、愛澤:こちらこそありがとうございました。

 

この対談の後、横須賀にある追浜のテストコースでのリーフの試乗を快く奨めていただいた。また別の機会を設け部会メンバーには案内したい。本対談からお分かりいただけると思うが、自動車という製品の仕様が大きく変わることで、社会のシステムそのものまで大きく変わろうとしている。自動車産業の一角にある教習所業界も、この変化を把握しておく必要はある。

今回は日産のEVという製品の背景にある、日産の価値観や世界観にまで話が及んだ。同じように、組織がどのような価値観を実現していくか、日本の全ての企業が考えなくてはならない所に来ている。社会の1機関として教習所が存在感を示せるかどうか、大きなチャンスが訪れていると認識したい。

 

 

※1 日産リーフ(LEAF)

http://www.nissan-zeroemission.com/JP/LEAF/

 

※2 回生ブレーキ

通常駆動力として用いるモーターを発電機として作動させ作動させ、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収することで制動をかける電気ブレーキの一手法。発電時の回転抵抗を制動力として利用するもので、電力回生ブレーキ、回生制動とも呼ばれる。電動機を動力とするエレベーター、電車、自動車ほか広く用いられる。

(フリー百科事典『ウィキペディア』より抜粋)

http://ecocar.autoc-one.jp/word/313997/

 

※3 日産ランドグライダー

http://www.nissan-zeroemission.com/JP/HISTORY/index.html?item=LandGlider

 

※4 スマート・グリッド

スマートグリッドは、IT・制御技術を強化することにより、電力需要と電力供給をリアルタイムに一致させる先進的な電力網(電力系統(grid))を指します。具体的には、消費者の電力使用量と電力会社の発電量を監視し、消費者と供給者との間でリアルタイムに双方向通信を行うことにより、電力会社が電力需要量に見合った電力を効率的に供給できるようにします。一方、消費者側も電力需要の削減や電力料金の低下などのメリットを受けることができます。現在の電力網は、大規模発電所で発電した電力を消費者に対して送るという一方向の流れですが、スマートグリッドの実現により消費者側からの需要情報が発電量に影響を与えることになり、現在の電力網は大幅に変革されることになります。また、このところ注目を浴びているプラグインハイブリッド車や電気自動車は電力網から充電を行うため、これからの電力網にとっての大きな負荷変動要因となります。このため米国では、地球温暖化対策の一環としてスマートグリッド構築が一つの大きな課題と位置づけられています。

(日立総研オピニオン 「今を読み解くキーワード」より抜粋)

http://www.hitachi-hri.com/opinion/02column/02word/k50.html

 

※5 エクストロイドCVT

http://www.jsae.or.jp/autotech/data/8-11.html

 

※6 操安性(そうあんせい)

http://www.alde.co.jp/ndesign/examples/soansei/index.html

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